ペトログラフについてはこのサイトで解説したとばかり思っていたのですが、PDF文書にリンクを貼っただけだったのに今頃になって気付いたので改めて(私なりの解釈を?)掲載しておきます。

「ペトログラフ」とは、簡単に言うと太古、人類が後世に伝えたい様々な意匠や文字を岩石に刻んだものを指す。最も古いものはウクライナの「カメンナヤ・モグリャ」にあるもので、旧石器時代(約 10,000 から 12,000 年前)のものといわれる。

7,000 から 9,000 年前頃には絵文字や表意文字のようなものが現れ始め、この頃は世界中で岩面彫刻はまだ一般的であったが、いくつかの文化圏では 20 世紀に西洋の文化が入ってくるまで、使用し続けられていたという。

もともとはギリシャ語で石を意味する「ペトロ」と記号を意味する「グリフ」の造語から海外では「ペトログリフ(petroglyph)」とされるが、そこでは一般的にグリフの文字どおりに「岩絵」や「線刻画」と呼ばれたり「岩面彫刻」「岩石線画」「岩面陰刻」と訳されるものの研究が主であるのに対し、日本では主として文字を研究対象としていることなどからペトログラフと称され今に至っている。

現在は海外でも岩刻文字としてのペトログラフ研究はもちろん、より広く「岩刻芸術(ロックアート)」=「Rock art」として洞窟壁画やドルメン(支石墓)、ストーンサークル(環状列石)等を含む全般的な研究が行われており、特にアメリカとフランスでの研究が盛んで、ユネスコに研究機関があるほか、ハーバード大学などでもその研究が行われている。

日本のペトログラフの始まりは1985年に西日本民俗芸術調査会により行われた山口県下関市彦島の杉田丘陵の一斉調査と言われ、翌年に「彦島ペトログラフを守る会」が発足。同年「ペトログラフ通信」創刊、同会を前身に日本ペトログラフ協会へと発展、日本各地でもペトログラフ研究組織が結成され、その研究対象も広がり今では前記ロックアートが基盤となっている。

日本では従来、「5~6世紀頃に日本に漢字が入る前は文字がなかった」とされていたが、ここ 30 年の世界の主要な大学や研究機関によって世界的にペトログラフが分布していて、日本列島にも同じようなペトログラフがあることが分かったため、「日本でも縄文時代から人間が住んでいたからには、漢字以前に文字が存在していたことは当然」とされる様になったという。

漢字渡来以後岩石に刻まれた文字は、「碑文」とか「碑」(いしぶみ)と呼ばれ、 ペトログラフとは区別されている。